
昨年12月13日、JR東海の発展に偉大な功績を残した鉄道マンが93歳でこの世を去った。国鉄の分割・民営化で1987年に誕生した同社の初代社長、須田寛さんだ。営業課長だった70年代の観光キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」による旅客増や92年の東海道新幹線「のぞみ」導入などで知られた須田氏。社長就任から間もないころ、富士駅での乗り換えの合間、須田氏はホームの端のベンチに座り、駅弁を食べながらつぶやいた。「風に当たりながら食べる駅弁は最高だな」
須田氏に「最高」と言わしめた魅力を守るべく、1921年に創業し、100年を超す歴史を刻む弁当メーカー「富陽軒」(静岡県富士市)には貫いてきた指針がある。奇をてらったり、過度にぜいたくにしたりせず、愚直に素朴な味を追求することだ。