「富士山の日」の23日、山梨県の富士北麓(ほくろく)地域では観光客や地元住民らが、壮麗な姿を眺めたり、富士山の形にちなんでおにぎりを食べるイベントに参加したりして、6月に世界遺産登録10周年を迎える富士山に思いをはせた。【小田切敏雄】
山梨県富士河口湖町にある富士五湖最小の湖・精進湖の他手合浜(たてごうはま)では、午前6時過ぎには雪化粧の富士山が姿を見せた。富士山が前衛の側火山・大室山を抱いているように見える「子抱き富士」の観賞地として人気が高いが、麓に細い幅の雲の帯がたなびいていたため大室山の姿は見えず「子抱き富士」はお預けに。
それでも同6時20分過ぎには家族連れらが浜辺に出て「富士山の日」の霊峰を仰いでいた。ワカサギ漁の船も繰り出し、いつもながらの精進湖の朝の光景が広がっていた。
観光客でにぎわう富士吉田市新屋の「道の駅富士吉田」では昼食の時間帯に、富士山の日を記念した「富士山おにぎり」が配られた。8月の「吉田の火祭り」にかけて、23日を「富士山の日祭り」と命名して実行委員会(桑原孝太実行委員長)が初めて企画。富士山の標高3776メートルにちなんで3776個のおにぎりが山梨、静岡両県で無料配布され、地域住民や観光客が富士山を思いながらおにぎりをほおばった。
配布したおにぎりには富士山麓(さんろく)で育った米「ゆきむすび」が使われた。趣旨に賛同し、市もおにぎり2000個を出して協力した。「道の駅富士吉田」からは富士山もよく見え、車で訪れた多くの観光客が次々に記念のおにぎりを受け取っていた。
桑原委員長は「富士山のように『当たり前にある』ものに気づき、感謝する機会としたい。今後も富士山の日に富士山の方角を向いて、富士山を思いながらおにぎりを食べるイベントを続けていきたい」としている。
富士急行線富士山駅(富士吉田市)では、富士山の日を記念した「富士山駅こどもまつり」が開かれ、親子連れが「おもちゃでんしゃ」「えほんでんしゃ」などのプログラムを楽しんだ。
沿線住民から不要になったおもちゃや絵本を譲り受けて電車の中に設置し、車内で遊ぶ体験を通して「物を大切にする」心を養う狙い。会場に集まった親子連れらは「おもちゃドクター」による「おもちゃ病院」の開設や、JR東日本の路線を走った後、富士急行で活躍している車両の展示によって公共交通を通してSDGs(持続可能な開発目標)に関する知識や関心も高めていた。