
富士山は10日、閉山した。山梨県側登山道「吉田ルート」では今夏、県の入山規制が強化され、県職員が必要な装備を持たない登山者の入山を拒否できるようにした。静岡県側の3ルートでも山梨と足並みをそろえた規制が導入され、大きな節目となった夏山シーズンが終わった。
吉田ルート5合目にある鉄製の規制ゲートは、この日も多くの登山者が行き交った。同僚ら3人と日帰りで登った千葉県八千代市の会社員、千田衛之介さん(25)は「今年登りたいと思っていて最終日だったので来た。入山料は高いけれど、払う価値がある最高の経験になった」と満足した様子だった。
入山料は、2024年の2000円から4000円に値上げ。ゲートの閉鎖時刻も2時間前倒しされ、午後2時~午前3時に山小屋宿泊者と下山者以外の通行を制限した。
午後2時前、県職員がゲート前に立った。「午後2時になったので閉めます」と声を張り上げ、警備員が扉を閉めた。現地で報道陣の取材に応じた三枝徹・県富士山観光振興監は「軽装での登山や(夜通し登る危険な)弾丸登山をかなり防止することができた。当初の目的をおおむね達成できた」と振り返った。
県によると、開山から10日午後2時までに通行を許可したのは14万9963人で、前年(確定値)に比べて262人増えた。入山料の値上げで減少が見込まれたが、昨年より天候に恵まれたことなどからほぼ同じ水準になったとみられる。
また、必要な装備を持たない登山者への指導を1144件実施。このうち、外国人が1033件で9割を占めた。装備品別では、上下分かれた雨具を持たないケースが1000件で最も多かった。
8合目の救護所などを運営する富士吉田市の堀内茂市長は、10日の定例記者会見で「懸念していたことがかなり払拭(ふっしょく)された。安心安全で快適な登山が楽しめたのではないか」と規制を評価した。市は23年、山小屋関係者らと規制の強化を要望していた。
静岡側の富士宮、須走、御殿場の3ルートでも、同じ入山料と時間帯による規制が実施された。静岡県の担当者は「初めての規制だったが、遭難救助の件数が減って一定の効果があったとみている」と話した。【野田樹】