今井久
山梨学院大学
経営学部教授
前回のコラムでは学生団体「トップファン」を取り上げたが、共同で代表を務めている長田拓真君が就職先に選んだのが韮崎市にある「株式会社アトリエいろは一級建築士事務所」(イロハクラフト)である。建築を専攻する長田君が、県内で自己実現が可能な職場と考えて決めたそうだ。
イロハクラフトは、千葉健司氏が2010年に設立した。千葉氏は韮崎高校出身。高校時代は陸上競技で活躍し、陸上を続ける前提で大学に進学した。
しかし、小さい頃からの夢であった建築関係の仕事が忘れられず、大学を中退し、建築の専門学校で学んだ。その後、大手ハウスメーカーに就職し、設計と現場監督の経験を積んだ後、設計会社に転職。そして、29歳で独立した。もともと独立したいという気持ちが強かったという。
「創る建築士より直す建築士」をモットーに、リノベーションの仕事を中心に取り組んできた。リノベーションの場合、ビフォー・アフターでお客さんの驚く姿が刺激になったという。そして、もっともっとお客様を驚かせたいと思うようになっていった。
創業は笛吹市石和町内であったが、実家がある甲斐市双葉に事務所を移し、更には、高校時代を過ごした韮崎に事務所を構えた。そして、市内の名物ビル「アメリカヤ」の復活を手掛けた。現在、事務所は同ビルの4階にある。アメリカヤの復活に関しては多くのメディアで取り上げられているので、ここでの記載は控える。
アメリカヤ復活後も、すぐ前の横丁を借りてテナントに貸し出し、「アメリカヤ横丁」を仕掛けた。また、近くの空いているビルのリノベーションを手掛け、2棟を宿泊施設として復活させた。これらが評価され、1年を代表するリノベーション作品を表彰するコンテストである「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2019」において最優秀賞を受賞している。
目指すところは、韮崎を全国から注目されるようなリノベーションの街にすること。現在、コロナ禍の影響で客足は伸び悩んでいるが、県内においては既に注目を集めており、全国から注目される日はそう遠くないように感じる。