利用者の骨折などが明らかになった遊園地「富士急ハイランド」(山梨県富士吉田市)の宙返りコースター「ド・ドドンパ」。最初の負傷情報から休止のきっかけとなった4件目の事故把握まで8カ月。その間、何が起きていたのか。
園によると、「ド・ドドンパ」は2017年、別のコースターをリニューアルして誕生した。一般的なコースターは高い位置まで持ち上げて落下させ、重力を使って加速するが、「ド・ドドンパ」は、機械的に車両を押し出し、スタートから1・56秒後には時速180キロまで加速する。
県や園側の説明を総合すると、最初に骨折事故が判明したのは、2020年12月。帰宅後に痛みを覚え、医療機関を受診した30代の女性が首と胸に全治2カ月の骨折の診断を受けた。
21年5月には、40代男性が背骨に全治1カ月の圧迫骨折、7月には50代女性の首と背骨の骨折が相次いで判明した。園側は、いずれのケースもレールや車両、装置などの検査を実施。3件目の後には加速度も測定したが、問題はなかったと説明している。
園側は、負傷した利用者の説明から、いずれも正しい姿勢で乗車していなかったと判断し、運行を続けていた。利用者のけがが判明する度、県警に届けていた。負傷があった期間の利用者は約21万人にのぼる。
園では8月12日に4件目となる30代男性から首の圧迫骨折の報告を受け、同日からの運休と総点検を決めた。17日に県と国土交通省に報告したが、広報担当者は「県からもっと早く報告すべきだと話があった。状況の認識に齟齬(そご)があった。今後はしっかり対応していきたい」と話している。
県によると、富士急ハイランドなど遊具を管理している事業者には、重大事故が発生した際、報告を求めている。今回の事故は17日に報告を受け、20日に公表した。「ド・ドドンパ」に関する人身事故の報告は初めてだという。
これらの報告や発表は法令に定められた手続きではなく、県が独自に実施した。県は「事故が相次ぎ、重大な案件だと判断して公表した」と説明する。
長崎幸太郎知事は20日の記者会見で「早期に報告し、適切な対応を行っていれば防げたと考える」と苦言を呈した。(三ツ木勝巳、吉沢龍彦)