山梨県身延町の特産品「あけぼの大豆」の地理的表示(GI)保護制度の登録を追い風に、町内で生産から商品開発、販売促進を手がける6次産業化の取り組みが活発化している。町が整備した「あけぼの大豆拠点施設」は今年度、町直営から指定管理者制度で民間企業が運営を受託して再出発し、機動的な展開に力を注いでいる。【高橋秀郎】
GIは、地域産品を知的財産として守る国の制度。あけぼの大豆は今年3月末、県内の農産物として初めて登録された。枝豆と大豆は今秋の収穫分から専用マークを付けて販売が可能となり、ブランド力向上や類似品の流通防止に役立てる。
町では2016年3月、町と生産者、商工会などがあけぼの大豆振興協議会を設立。拠点施設は17年度に開設し、売り上げは18年度の約400万円から21年度は3倍の約1200万円に増えた。あけぼの農園株式会社(遠藤一彦社長)が運営し、地域おこし協力隊員として3年前に横浜市から移住した専務の浅野秀人さん(52)ら12人が従事している。
今年度は、加工品に「きなこプリン」(300円)など3品を加えて15品に増やし、道の駅やイベント会場などで販売している。さらに若者のアイデアを取り入れようと山梨学院大と協力し、種まきから学んだ経営学部3~4年生約20人と年度内に新商品を開発・販売する計画だ。
5月には、浅野さんが会長に就任し、町内で産業や観光に携わる約10の事業者・団体で「みのぶキズナプロジェクト」を設立した。写経や法話、喫茶など体験型イベントを開催し、あけぼの大豆をはじめ西嶋和紙やゆばなど特産品のPRを始めた。浅野さんは「町内の力を合わせて魅力を広く発信し、活性化につなげたい」と語る。
同町曙(あけぼの)地区発祥で、粒が大きく、強い甘みが特徴。収穫時期は枝豆が10月、大豆が11月下旬~12月中旬。農家は約300軒。合計出荷量は16年度の約18トンから21年度は約28トンに増加したが、安定供給や後継者育成が課題だ。