2年ぶりに開山した富士登山が低迷している。7月1日の山開きから1カ月間の登山者数は2万人余と2年前の4割程度にとどまり、計測を始めた1981年以降、最低となった。8月に入っても伸び悩んでおり、新型コロナウイルスの影響による外国人観光客の減少や、感染拡大、東京オリンピックのテレビ観戦で外出が控えられた影響などがあるとみられる。シーズン到来に期待していた山小屋関係者からは困惑する声も聞かれる。【山本悟】
例年7月1日に山開きが行われる富士登山は、梅雨が明け、学校が夏休み入りする7月20日前後から8月上旬までがピーク。2020年はコロナ禍で開山が見送られたが、21年は2年ぶりの開山に山小屋関係者の期待も大きかった。
ところが山梨県富士吉田市富士山課によると、頂上を目指す登山者や山小屋宿泊者が通過する6合目の今年7月の入山者数は2万3072人で、19年の約6万1200人から激減。8月上旬(1~9日)の登山者数も約8700人で2年前の同じ期間の3割程度にとどまる。例年2割程度を占める外国人観光客の減少や感染の急拡大による緊急事態宣言などの適用対象地域の拡大、五輪のテレビ観戦で外出が控えられたことなどが影響したとみられる。
富士山の登山者数は、12人が犠牲となった大規模落石事故(1980年8月)を契機に、安全な登山を目指すため81年から毎年6合目で計測している。7月の1カ月間では、世界文化遺産に登録された2013年に過去最多(10万4919人)を記録。これまで最も少なかったのは89年の3万4033人だった。
山梨県側の山小屋などでつくる富士山吉田口旅館組合の中村修組合長は「予想以上に登山者が少なく経営は厳しい。来年以降もこの傾向が続けば、宿泊費の値上げなども考えないといけなくなる」と困惑する。