山梨県小菅村で、物流会社などによるドローンを使った物資の輸送実験が進められている。7月には、新たに開発された運搬専用のドローンが導入され、デリバリー用の牛丼を乗せた初の実用実験を公開。中山間地での買い物代行や流通各社の共同配送などの全国展開を目指しており、コロナ禍での需要拡大に対応できるビジネスモデルとして10月を目標に村での有料輸送を始める。【山本悟】
7月21日、村でのドローン配送の拠点となる橋立地区の広場に停車した牛丼チェーン「吉野家」のキッチンカーから、調理されたばかりの牛丼4個がドローンの胴体に収められ離陸。5分足らずで約500メートル離れた川池地区の離着陸所に着陸し、連絡を受け待ち構えていた主婦、酒井江美さん(34)に届けられた。
実験を行っているのは、産業用ドローンの技術開発に取り組むエアロネクスト(本社・東京都渋谷区)。運搬専用ドローンは全長1・7メートル、幅1・4メートルで、荷物は重さ5キロまで安定輸送できる。当面は橋立地区の配送拠点まで荷物をトラック輸送し、そこでドローンに積み替え村内全8地区の広場などに設ける離着陸所に輸送する。将来的にはドローンで各家庭に戸別配送できるシステムを開発する。
村でのドローン配送は、物流大手のセイノーホールディングス(岐阜県)との共同事業。人口約700人の村の住民は車で約40分かけ大月市内のスーパーなどで買い物をしており、ドローン配送の関心は高い。高齢者が多い中山間地での買い物代行や医薬品配送をはじめ、輸送コストのかかる山間地域で流通各社が共同して配送するモデルを構築するのが目的だ。村での10月中の有料輸送開始を目指し、運賃は宅配便並の料金を想定する。
実験で牛丼を受け取った酒井さんは「自然豊かな村で子育てできるのはいいが、子供用品など買い物は不便さを感じていた。(運賃は)買い物のためのガソリン代を考えれば大きな負担ではないのでは」と期待する。
エアロネクストの田路圭輔社長は「過疎地が抱える教育と仕事の課題はリモートなどで解決し、残る医療、買い物の問題もドローンで解決できれば、移住も加速する。ドローンで過疎地の未来に貢献したい」と語る。