(本編より)
内田祥哉先生の著作『ディテールで語る建築』(彰国社,2018年)の中の「ポツ窓から柱間装置への60年」で「ヨーロッパの建築は外観,つまり姿の設計が主流だと言えます」と指摘されているように,日本の建築は長いこと外観といえば,柱間のデザインがエンジニアリングの要素とともに語られることが多く,近年になってようやく姿という建築全体の把握が問題とされるようになったものと思われる。大袈裟に言えば,建築のサーフェスデザインやテクノロジーという新たな概念の登場である。本特集では,そうした日本では認知度が低いサーフェスデザインやテクノロジーの言わば黎明期を今日まで支えてきた旭ビルウォール(以下,AGB)が,建築家とともに手掛けてきた最近の作品例を,その表現はもとより,建設インダストリー側の用語であるDfMA(Design for Manufacturing and Assembly)の観点からも解読してみたいと思う。
『サーフェスデザイン&テクノロジーの現在』
撮影はナカサアンドパートナーズの中道淳が全面的に担当。カラー写真が多い建築雑誌の中で敢えてモノクロームを基調とした構成とし、建築家の意図した「デザイン」「質感」を表現することに注力した。
図面は施工図を基に、彰国社編集部、アートディレクター塩谷嘉章が編集を担当。写真同様のトーンとなるよう黒地に対する白線の構成とし、建築図面が本来持つ美しさの表現を追求した。
上述の通り本全体はモノトーンでありながら4色のインク(部分的にシルバーの計5色)を用い、写真集に引けをとらない再現性と、印刷物ならではの質感も追求し、本=オブジェクトとしての存在感を際立たせている。【書籍詳細】
タイトル:『サーフェスデザイン&テクノロジーの現在』
著者:押野見邦英
発売日:2021年8月31日
出版:株式会社 彰国社
仕様:188ページ
定価:3,740円(本体3,400円+税10%)
目次:
### AGBのデジタル・クラフトマンシップ(押野見邦英)
#01 Louis Vuitton Maison Osaka Midousuji
#02 GINZA SIX House of Dior Ginza
#03 すみだ北斎美術館
#04 ロロ・ピアーナ銀座店
#05 資生堂銀座ビル
#06 洗足学園音楽大学 Stage on the Lawn
#07 洗足学園音楽大学 Silver Mountain
#08 上越市立水族博物館 うみがたり
#09 大分県立美術館(OPAM)
#10 渋谷フクラス
#11 香月メディカルビル
#12 ミキモト銀座本店
#13 金沢海みらい図書館
#14 The Tender House
#15 カンダホールディングス本社
#16 東京大学安田講堂 改修
#17 全国信用組合会館
#18 i liv(アイリブ)
### エキスパートインタビュー
・GRC – 鉄を目指して
・ガラスより – 自由な形へ
・施工 – デジタルと現場の狭間で
・デジタルテクノロジー – 職人の精度や勘はどこまでデータに置換え可能か?
・要素技術の構成設計 – あらゆる知見の統合へ
### 鼎談 人間とデジタルテクノロジーが建築の海を渡るとき 押野見邦英+山梨知彦+櫻井正幸【編集体制】▼編著 : 押野見 邦英(k/o design studio)
1941 年東京都生まれ。1965年横浜国立大学工学部建築学科卒業。同助手を経て,1966年鹿島建設入社、元芝浦工業大学客員教授。現在,k/o design studio主宰。代表作に「八重洲ブックセンター」(1978年),「大阪東京海上日動ビルディング」(1990年),「資生堂湘南研修所」(1997年),「洗足学園音楽大学 シルバーマウンテン・eキューブ」(2013年)など。http://www.kodesign.co.jp/index.html
(撮影:畑拓)
▼撮影 : 中道 淳(ナカサアンドパートナーズ)
1957年兵庫県神戸市出身。1979年東京工芸大学 短期大学部卒業。同年より仲佐 猛に師事し、以来ナカサアンドパートナーズに在籍。建築、インテリアの分野を中心に活動中。倉俣史朗氏の作品を紹介した映像作品「パープルシャドウズ」が、モントルー・エレクトリックシネマフェスティバルの産業部門最優秀賞受賞(1993)。http://www.nacasa.co.jp/
(撮影:畑拓)▼デザイン : 塩谷 嘉章(SHIOYA Tokyo)
アートディレクター/グラフィックデザイナー。1987年東京生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。修了後、フリーランスを経て、2018年より株式会社 SHIOYA Tokyo 代表取締役。2017年より建築雑誌『ディテール』アートディレクター(212号〜)。https://shioya-tokyo.com/▼出版 : 彰国社
1932年、下出源七によって創立され、以来、建築関係の図書を中心に出版活動を続ける。戦前は国宝などの文化財建造物に関する書籍を出版。戦後は時代の要請に沿って現代建築の分野にも企画を拡大して、雑誌3誌(『建築文化』『ディテール』『建築の技術 施工』)の発刊、『建築学大系』をはじめ『世界の現代建築』『土木工学大系』等々のシリーズ物や、『建築大辞典』をはじめとする辞事典類など、数々の重要単行本など3,000点余の多岐にわたる出版物を刊行、多数の建築家や研究者を育み、国内外の斯界の進歩発展に大きく寄与する。https://www.shokokusha.co.jp/▼編集協力 : AGB
1990年設立。GRC(ガラス繊維補強セメント)の設計・製造・施工事業よりスタートし、建築材料に対する知見を高めつつ、現在では建物全体の美的および技術的性能において最も重要な要素の1つである『ファサードエンジニアリング』を中心事業とする。ディテール、構造、構法、温熱環境、照明、素材開発、材料調達、コストコントロール、施工計画等多岐にわたる専門性が求められるファサードに対して、要素技術をトータルコーディネートする役割を担う。https://www.agb.co.jp/
本リリースは編者連名によるプレスリリースです。