~あの有名企業の始まりとは?~
たとえばあなたが町のお菓子屋さんだとします。
「子どもにも、お年寄りにも、観光客にも、みんなに喜んでもらえるお菓子をつくりたい」
そう思うのは、自然なことです。
でも、ちょっと考えてみてください。
その「みんなに向けて」作ったお菓子、いったいどんな味でしょう?
どんな箱に入れて、どんな売り場に並べるでしょう?
言葉がぼんやりして、味も見た目も、「ふつうのもの」になってしまいませんか?
実は、多くの有名企業が最初にしたのは、「誰に届けるのか?」を決めることでした。
ターゲットが決まると、味も見せ方も、言葉も、売り方もすべてが変わる。
そして、それがブランドの力となって、今のような知名度や人気につながっていったのです。
ここからは、誰もが知っている企業の事例で見ていきましょう。
事例① ユニクロ:誰にでもではなく、「普通の人」のために
いまや世界中に広がっている「ユニクロ」。
その名前を聞くだけで「手ごろな価格で品質がよく、誰でも着やすい服」というイメージが湧くと思います。
でも、ユニクロが最初から「みんなの服」として成功したわけではありません。
実は、ユニクロは「おしゃれを追い求める一部の若者」ではなく、「特別じゃない、ふつうの生活をしている人」を明確なターゲットとして設定してきました。
だからこそ、流行を追いすぎるのではなく、ベーシックなデザイン、着回しのきく服、毎年定番で揃うラインナップ。
色展開も多く、サイズも豊富。価格も家計にやさしい。
広告でも、「モデル風の人」ではなく、ふつうの家族や学生、働く人が登場します。
SNSの投稿も、「おしゃれを競う」より「日常で役に立つ」が軸になっています。
ターゲットを「ファッション好きな一部」ではなく「ふつうに暮らすすべての人」に絞ったことで、
“おしゃれよりも、使いやすさ”を大切にするマーケティング手段が選ばれたのです。
事例② スターバックス:コーヒーではなく「時間」を売った
スターバックスと聞けば、ただのコーヒー店ではないと感じている方も多いはずです。他の店より高くても、お店はいつもにぎわっています。なぜでしょうか?
スターバックスがターゲットにしたのは、「ゆっくり過ごせる居場所を求める人」です。
ただ「おいしいコーヒーを飲みたい人」ではなく、
「仕事の合間にほっと一息つきたい人」「誰かとの待ち合わせで少しだけ落ち着きたい人」など、“場所や時間”を求める人たちです。
だから店内は、木のぬくもりを感じるような内装、座りやすいイス、静かめのBGM。
Wi-Fiや電源もあり、「長居していいですよ」と伝えているような空間です。
CMもほとんどやりません。
そのかわり、店舗の雰囲気や、スタッフの接客、限定カップのデザインなど、「体験そのもの」が広告になるような形をとっています。
これも、「コーヒー好きな人全員」ではなく、
「ちょっと落ち着きたい人」に届けたい、という明確なターゲットがあったからこそです。
事例③ キユーピー:赤ちゃんとお母さんへの深い思い
マヨネーズの「キユーピー」といえば、可愛らしい赤ちゃんのマークが思い浮かびますね。
実はキユーピーという名前自体が、「健康的な赤ちゃんを育てたい」という想いからつけられたもの。
当初のターゲットは、「子育て中のお母さんたち」でした。
戦後の日本で、栄養が足りない時代に、「子どもが元気に育つように」と、たんぱく質や油分をしっかり取れるマヨネーズを売り出したのが始まりです。
テレビCMでも、子どもが喜んで食べる様子、家族の団らんの食卓を描くものが多く、
「栄養がある」「食がすすむ」「お母さんを助ける調味料」としての立ち位置を築いてきました。
最近では「やさしい味」「添加物が少ない」など、健康志向のお母さんへのメッセージも強くなっています。
これも、「とにかく売れるように」ではなく、
「家庭の食卓を預かるお母さんたち」に届けようと決めたからこそ選ばれた戦略です。
ターゲットが決まると、「伝え方・売り方」が揃う
どの企業も、はじめから「みんなに届けよう」とはしていません。
「誰に届けたいか?」をまず決める。
すると、
● どんな商品にするか(内容・価格・見た目)
● どんな場所で売るか(店舗・通販・置き場所)
● どんな言葉で伝えるか(広告・SNS・店頭POP)
● どんな雰囲気で接するか(接客・音楽・制服)
すべてが、自然と決まっていくのです。
あなたの商いの「いちばんの相手」は誰ですか?
もしあなたが、
「いろんな人に喜んでもらいたいけど、どう発信したらいいかわからない」
「SNSやチラシをがんばっても、反応がない」
という悩みを持っているとしたら、まずやるべきことは「ターゲットを決める」ことです。
むずかしく考えなくて大丈夫です。
「最近、いちばん喜んでくれたお客さんは誰だったかな?」
「この商品、本当に届けたいのはどんな人だろう?」
そんなふうに、一人の顔を思い出すことから始めてみてください。
・おわりに・
ターゲットを決めるのは、しぼることではありません。
その人に“ちゃんと届くように”整えること。
そして、その整え方こそが、あなたの「マーケティングの手段」になります。
有名な企業たちも、最初は「この人に届けたい」という思いからすべてを始めています。
あなたの商いにも、きっとそんな“原点”があるはずです。
ぜひ一度、立ち止まって、「誰に届けたいか」を考える時間をとってみてください。
そこから、あなたの商売がまたひとつ、前に進むきっかけが見えてくるかもしれません。