静岡・伊東駅の正面改札前の2階吹き抜けの天井には色濃く風化した木の梁が、明かり窓に照らされて浮かび上がっている。1938年の開業当時の面影を残すこの駅で59年、弁当販売を始めたのが祇園だ。観光客や通勤客だけでなく、周辺の地元の人たちにも親しまれている。
「一番人気は46年の創業以来のレシピを守ってきたいなり寿しです」と話すのは祇園の五代目、守谷匡司さん(54)。いなり寿しは俵型で、ほどよく酢が効いた米の甘みと、ジューシーな油揚げから出るしょうゆとざらめの甘さが絶妙。なんといっても粒の立った米のもっちりとした食感が心地いい。
米はコシヒカリをベースにもう一品種を配合して、冷めてもおいしいご飯作りにこだわっているという。温泉街にある本店の水は目の前にある山の湧き水が水源地となっており、祇園の弁当はこの水も自慢の一つだ。