皇海山(すかいさん)(2144メートル)の群馬県側山腹「根利山(ねりやま)」地区(沼田市)に、明治から昭和の40年間だけ開設された木材供給基地があった。山の奥地ながら、砥沢と平滝の2大集落を中心に最盛期には計3000人とも言われる作業員と家族が暮らした。だが、木を切り尽くすとパタリと閉鎖。にぎわいはこつぜんと消え、今では森に沈む「幻の集落」と呼ばれる。
皇海山の反対側にあったのは、東洋一とうたわれた栃木県の「足尾銅山」。古河市兵衛が買収して22年目の1898年、銅山が「根利林業所」を開いたのに始まる。坑道の支柱や蒸気機関の燃料、会社施設や従業員住宅の建築資材として大量の木材が必要だったが、近くの山林は枯渇したため、県境を越えて進出した。現地の旧利根村誌には「東西三里(12キロ)、南北五里(20キロ)。人跡未踏の大森林地帯」とある。毎年一定区域の…