軽トラック1台分のキャンプ用まきから別荘の草刈り、果ては実物のマンホールふたまで。各市町村が財源確保のため返礼品に知恵を絞るふるさと納税に、山梨県も推進本部を立ち上げ本格参戦した。ユニークな品々やサービスなどあの手この手の返礼品を探ると、時代の移り変わりが見えてくる。【山本悟】
県によると、県と県内市町村に対する2020年度のふるさと納税の合計寄付額は、184億3200万円。市町村別では、富士吉田市が58億3100万円の最高額で、2位の山梨市の16億8200万円の3・5倍と突出。全国順位も6位と健闘した。富士吉田市によると、21年度は72億1300万円で前年度より24%も伸びた。
各自治体の返礼品は、ぶどうやもも、ワイン、ミネラルウオーターなどの名産品や織物などの地場産品が主流だが甲州市では、コロナ禍での巣ごもり需要に注目し、一升瓶の赤、白ワインのセット(寄付額2万円)を昨年12月、返礼品に追加。10件ほどの注文があった。アウトドアブームに着目するのは「キャンプの聖地」を自認する道志村だ。軽トラ1台分のまき(同12万円)を今年1月にふるさと納税の専用サイトに登録した。クヌギやコナラなど火持ちのよい広葉樹を用意、最近静かなブームを呼んでいる薪ストーブ用の冬需要も考えられ、「まきで村をアピールしたい」(ふるさと振興課)と意気込む。野外でのサウナ人気にあやかり、韮崎市では市内の加工業者が製材した県産総ヒノキ造りのたる型サウナ風呂(同400万円)を用意。5月に専用サイトに登録した。
一方、忍野村は、30年前のバブル期の別荘ブームで購入した別荘所有者が高齢化していることから、富士五湖地域の別荘を対象に、年2回の草刈りサービス(同9万5000円)を昨年11月に始めた。さらに、高度成長期に都市部に人口が流出、過疎化に悩む小菅村では、空き家内部の掃除、墓掃除の作業(同各3万円)を代替わりした村外所有者に代わって村社会福祉協議会に登録する高齢者が行っている。
珍品としては、今でもブームが続くマンホールカード人気に乗り、市川三郷町が橋と花火をあしらったマンホールのふた(同29万4000円)を18年に1点限定で出品、47キロある鋳物製で話題になったが、今も引き合いはないという。
このほか、社会貢献活動の支援付き返礼品も注目されている。富士吉田市は21年6月から、野良猫を殺処分から救い保護する団体への寄付(100円)がついたブレンドコーヒー800グラム(同1万円)を登録。猫好きなどを中心に、SNS(ネット交流サービス)で拡散されている。市ふるさと納税推進室は「特産品が着目される返礼品だが、自身が社会の役に立っていることが見えるものとして、社会貢献や国際貢献の活動支援の返礼品が増えるのでは」と話す。
市町村のほか、住民税を徴収している山梨県も独自でふるさと納税を実施している。4月には推進本部を設置、魅力ある返礼品の研究、開発に乗り出した。2014年に専用サイトに登録、19年度に2000万円だった寄付額が21年度に8億8200万円に増額した。現在はシャインマスカットやももなど1698件の返礼品を登録。中には、出産から4カ月後まで母親が宿泊しながら心身を休息できる健康科学大産前産後ケアセンター(笛吹市)の利用券(寄付額1万円から)もある。