多摩川源流域の山梨県小菅村で、良質な水を仕込みに使って生産されているクラフトビールが人気を呼んでいる。2017年に村内に工場が開設されると、個性豊かな味わいが評判となり、海外26カ国に輸出するまでに成長。工場生産だけでなく試飲や見学もできる初の多機能の新工場を村内に建設する計画も具体化し、村も観光誘客への期待を寄せている。【山本悟】
新工場を整備するのは、小規模生産によるクラフトビールを製造、販売するファーイーストブルーイング(山田司朗社長)。11年創業で、17年に村内に「源流醸造所」を開設すると、20年には本社も東京都渋谷区から移転した。現在は軽快な飲み口の「東京ブロンド」やドライでシャープな「東京ホワイト」などの定番や期間限定品などを含め、計43種類を生産。国内の一般小売店やレストランなどで販売するほか、アメリカや台湾、フランスなどに輸出している。販路拡大により売り上げを伸ばしており、クラフトビール人気を反映し都内に直営店舗も開業した。17年は年間10万リットルだった生産量は現在は50万リットルで「村の工場が手狭で需要に対する生産が限界に近くなってきたため」(山田社長)、新工場を整備することにし4倍の200万リットルを見込む。23年中の完成を目指しており、村や周辺地域から新たに10~20人の雇用を予定する。
新工場の建設地は、日帰り温泉施設「小菅の湯」に隣接する民有地で、道の駅や、農産物などの物産館があり年間20万人の観光客が訪れるエリア。村が、この民有地約4000平方メートルを借り上げて造成、うち2000平方メートルを同社に貸し付ける。新工場の周囲に公園や公共施設も整備する構想で、造成に約2000万円を見込んでいる。
山田社長は、ビール製造に適した寒冷な気候と水質の良さなど村の自然環境を評価しており「あくまでも(工場新設の)目的はビールの安定的な製造だが、新工場で新たな需要の開拓も期待できる」と話している。