山梨出身の言論人で元首相の石橋湛山(1884~1973)の足跡を紹介している甲府市朝気1丁目の山梨平和ミュージアムで5日、「満州事変90年を考える」と題する企画展が始まった。事変勃発当時の新聞報道の変遷や、山梨から旧満州に入植した開拓団の足取りなどをパネルにまとめて展示している。
事変のきっかけとなった柳条湖事件は、今から90年前の1931年9月18日に発生した。旧満州(中国東北部)の南満州鉄道が当時の日本軍の謀略で爆破された事件で、日本はここから足かけ15年間におよぶ戦争に突き進んだ。
企画展ではまず、新聞報道の変遷を、当時の朝日新聞や山梨日日新聞の記事から振り返る。軍縮を主唱していた朝日新聞も事変勃発を機に社論を転換し、戦争動員の世論形成に加担したことを解説している。
満州国の建国後は、県内でも旧満州に入植する開拓団が組織された。パネル展示では、県内の主な開拓団と入植地、敗戦後の引き揚げの様子をまとめた。
展示初日となった5日、引き揚げ体験が紹介されている甲府市の石原孝徳さん(84)が来場した。両親とともに旧満州にわたり、今の小学3年生で敗戦を迎えた。翌年帰国するまでに祖母と妹2人が亡くなったという。「伝染病と飢えで次々に人が死んだ。父親がなぜ満州に渡ったのか教えてほしかったが、ついに語らなかった」と話した。
企画展は来年2月末まで。(吉沢龍彦)