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2022/12/22 ,

大麦β-グルカンと同様にアラビノキシランは短鎖脂肪酸の産生を増加させることによりGLP-1分泌を促進する

大麦β-グルカンと同様にアラビノキシランは短鎖脂肪酸の産生を増加させることによりGLP-1分泌を促進する

穀物のリーディングカンパニー株式会社はくばく(本社:山梨県中央市、代表取締役社長:長澤 重俊)は、大妻女子大学家政学部青江誠一郎教授との共同研究により、大麦に含まれる水溶性食物繊維であるアラビノキシランは大麦β-グルカンと同様に短鎖脂肪酸の産生を増加させることによりGLP-1分泌を促進することを明らかにしました。これにより大麦はアラビノキシランとβ-グルカンの2つの水溶性食物繊維により腸内発酵を通じて生理機能に影響を与えていることを示しました。
 本研究は科学雑誌『Biochemistry and Biophysics Reports』(Biochem Biophys Rep. 2022 :101343)に掲載されました。

〈研究の背景と目的〉
大麦は水溶性食物繊維を豊富に含む穀物で、その主成分はβ-グルカン(1)やアラビノキシラン(2)などの難消化性の多糖類です。特にβ-グルカンは腸内細菌によって発酵されることが知られており、代謝物として酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸(SCFAs)(3)が生成されます。SCFAsは、消化管、内分泌細胞のL細胞にあるGタンパク質共役型受容体43(Gpr43)を介して、グルカゴン様タンパク質1(GLP-1)(4)の放出を刺激します。GLP-1はインスリンの分泌を誘発し、インスリン抵抗性を改善します。この事から腸内発酵を介した代謝への改善効果が期待されています。
一方で、アラビノキシランはβ-グルカンに次いで大麦で豊富な水溶性食物繊維ですが、これまでその生理的機能を示した研究はほとんどが小麦のアラビノキシランであり、大麦由来ではありません。アラビノキシランとβ-グルカンは分子構造や粘性が異なるため、腸内細菌による発酵やGLP-1分泌反応に違いがある可能性があります。
そこで本研究では、肥満モデルマウスにβ-グルカンを含まないアラビノキシラン主体の大麦(bgl)と、β-グルカンを多く含む大麦粉(BF)を摂取させ、大麦由来のアラビノキシランが腸内発酵性およびGLP-1分泌に及ぼす影響を調べました。〈研究方法〉
初めにbglとBFから水溶性食物繊維を抽出し、得られたサンプルを酸分解して単糖を抽出後、GC/MSを用いて糖組成を確認しました。次に4週齢の雄C57BL/6Jマウスを3群(n=8)に無作為に分け、セルロース(C)、bgl、BFを添加した高脂肪食を12週間摂取させました。
11週目に耐糖能試験を実施し、血糖値、インスリン、GLP-1濃度を測定しました。盲腸のSCFAs含量はGC/MSで定量し、回腸のL細胞分化に関するmRNA発現量はReal-Time PCRで定量しました。〈研究結果〉① 食後のGLP-1濃度はBF群、bgl群で共に増加する。
血糖値の曲線化面積(Area under the curve: AUC)(5)はC群と比較してBF群で有意に低下しましたが、bgl群では有意な差はありませんでした。しかし、糖投与後60分値においてbgl群、BF群ともにGLP-1濃度が大幅に増加し、30-60分値でのAUCはbgl、BF群どちらもC群と比較して有意に増加しました。

図1.大麦摂取によるGLP-1濃度の変化
耐糖能試験後30~60分後のAUC(Σmmol/L×分)を示す。
(出典: 『Biochemistry and Biophysics Reports』 2022 :101343より引用して作図)② 腸内のSCFAs濃度はbgl群でも増加する。
C群と比較してbgl群はBF群と同様に盲腸内容物中の酢酸、コハク酸濃度が増加し、総SCFAs濃度も増加しました。さらにbgl群でのみ酪酸濃度が有意に増加しました。

図2.大麦摂取による腸内SCFAs濃度の変化
(出典: 『Biochemistry and Biophysics Reports』 2022 :101343より引用して作図)③ GLP-1分泌に関わる遺伝子発現量はbgl群とBF群で共に増加する。
回腸内のGpr43のmRNA発現量はC群と比較してbgl群、BF群共に有意に増加しました。さらにGLP-1合成酵素の1つであるPc1のmRNA発現量も両群で有意に増加しました。さらに、Pc1のmRNA発現量と酢酸、総SCFAs濃度にGpr43と酪酸濃度と正の相関関係が確認されました。〈今後の展望〉
この研究により、動物モデルで、大麦を食べることによる腸内でのSCFAsの増加やGLP-1濃度の増加は、β-グルカンだけでなくアラビノキシランも寄与していることが明らかとなりました。この結果はアラビノキシランの構成単糖であるキシロースやアラビノースが発酵基質として腸内細菌に代謝された影響だと考えられます。
一方で、bglを摂取しても食後血糖値の上昇を抑制する作用はありませんでした。これはbglの水溶性食物繊維量がBFと比較して少なかった点が考えられます。インスリン分泌や抵抗性に関するアラビノキシランとβ-グルカンの違いを明らかにするにはさらなる研究が必要です。
結論として、本研究では大麦β-グルカンとアラビノキシランの2つの水溶性食物繊維が腸内発酵を通じて生理機能に影響を与えることを示しました。
【用語解説】
(1)β-グルカン:グルコースがβ-グリコシド結合でつながった多糖類で、穀類や菌類、キノコ類に多く含まれる。
(2)アラビノキシラン:ヘミセルロースの1種で、一般的には不溶性だが、調理加工や腸内細菌によって水溶化する。
(3)GLP-1:消化管ホルモンの1種で、小腸下部のL細胞から分泌される。GLP-1が分泌されると、血糖値の上昇に依存してインスリン分泌が亢進し、血糖値が調節される。
(4)短鎖脂肪酸(SCFAs):炭素数6未満の脂肪酸で、生体内では多くの場合腸内細菌の発酵によって生成され、腸内細胞のエネルギー源となる。最近では受容体を介して全身の臓器で生体調整に関与することが報告されている。
(5)曲線化面積(AUC):食負荷試験の血糖値の変動曲線とX軸の間の面積。食負荷試験での血糖値の変化を表す指標。本研究ではGLP-1濃度でも算出。
はくばくについて

当社の社名「はくばく」は白い大麦という意味です。創業社長である祖父が「もっと麦ご飯を喜んで食べてもらいたい。」という思いから、大麦を一粒一粒半分に割って黒い筋を目立たなくした製品を開発しました。
以来、我々はくばくは穀物とともに歩み、精麦の他、雑穀、和麺、麦茶、穀粉、米を事業として手がけるようになりました。
人類を太古から支えてきた大切な「穀物」を、現代の食卓へもっと多く登場させ、もっと楽しんで食べてもらうこと。それは家族の笑顔が増えること。またそれは家族が健康になることだと考えています。これを実現するために、我々はくばくは「穀物の感動的価値を創造する」ことを社員一丸となって本気で目指して参ります。
(株式会社はくばく 代表取締役社長 長澤 重俊)
社名    : 株式会社はくばく
所在地   : 〒409-3843 山梨県中央市西花輪4629
代表    : 代表取締役社長 長澤 重俊
設立    : 昭和16年4月15日
資本金   : 98,000,000円
事業内容: 食品製造および販売
URL : https://www.hakubaku.co.jp/

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