峡南地域に伝わる伝統技術を国内外に発信しようと、地元の職人らが結集し、写仏セット「なまよみの」を製作した。同地域の活性化を目指す一般社団法人「
SZAC(すざく)
南山梨」がクラウドファンディング(CF)の返礼品としている。
写仏は、仏の下絵に紙を重ね、筆で写し描くこと。身延、富士川、市川三郷、早川、南部の5町からなる峡南地域では手
漉(す)
き和紙や雨畑
硯(すずり)
など、昔から書道にまつわる工芸が盛んだった。
伝統工芸品は特に、職人の技術によって何度も修復して使うことができ、近年、重視されるSDGs(持続可能な開発目標)の考えにも合致している。そうした良さも合わせてPRしようと、地元の職人や画家ら約20人が協力して2年ほどかけ、この取り組みにこぎ着けた。
セットの名称「なまよみの」は、万葉集の中で甲斐国を詠んだ和歌の
枕詞(まくらことば)
からとった。外国人や初心者も描きやすいよう、手本に竜や花の絵などを用意。和紙や硯といった工芸品を地元の職人が手がけた。
製作には約3か月かかり、小売りでの販売が難しいことから、CFの返礼品として贈ることを決めた。3月末までに専用サイトを通じて支援してくれた人のうち希望者10人が受け取れる。完成したものから順次、発送するという。
下部ホテル(身延町)の社長で、同法人の矢崎道紀代表(41)は「さまざまな工芸品の職人が一つのものを作り上げることは珍しい。『なまよみの』を通じて、多くの人に峡南地域の魅力を知ってほしい」と期待している。