コロナ禍に見舞われてから3カ月後の2020年7月以降、東京の人口を見てみると驚くべきことがわかります。この月より東京都では毎月、人口の社会減、つまり転入者より転出者が多い状態が2021年2月まで8カ月連続で続いたのです。
例年3月、4月は進入学や就職、部署移動などで東京都は大幅な転入増になります。そうした意味では2021年3月からは、社会減から再び社会増状態に転じるのは不思議ではないのですが、問題は全体人口です。
東京都は2021年になってからは各月の人口が、前年同月の数を上回れない事態に陥っているのです。東京から人々が着実に脱出していることは、どうやら間違いないようなのです。
東京都は1997年以降、つねに転入者が転出者を上回る「社会増」の状態を維持してきました。夫婦共働きが当たり前となって都心居住志向が強まる中、いわば東京都がつねに人を集め続ける「ひとり勝ち」状態だったのです。2019年には年間で転入者が42万7307人に対して転出者は34万732人。差し引き8万6575人もの社会増を記録していました。
しかし今、コロナ禍で多くの企業でテレワークという新しい働き方が浸透してきて、郊外の戸建て住宅を物色する動きは、本格化しています。
これまでは、都心にあるオフィスに通勤することが当たり前であったものが、週1回、あるいは月2、3回程度の通勤をするだけとなれば、「会社ファースト」から「生活ファースト」の家選びに切り替わります。いきなり地方に移住するのは難しくとも、東京都の周囲3県や茨城、群馬、栃木、長野、山梨、静岡といった近県に家を持つことも現実味を帯びているのです。
そして、郊外に転じた人たちが積極的に戸建て住宅を物色しています。アフター・コロナを見据えた家選びが始まっているのです。
郊外の戸建て住宅を物色する動きが本格化