関東財務局甲府財務事務所は10月の経済情勢報告で、山梨県内の景況判断を「新型コロナウイルス感染症の影響により、厳しい状況にあるなか、一部に弱さがみられるものの、持ち直しつつある」として据え置いた。前回7月は3四半期ぶりに引き上げていた。
河内健司所長は先行きについて「ワクチン接種が進み、政策効果や海外経済の改善もあって景気が持ち直していくことが期待されるが、サプライチェーンを通じた影響による下振れリスクに十分注意する必要がある。観光や宿泊などは全国的な緊急事態宣言の解除もあり、10月以降の行楽シーズンへの期待は大きい」と述べた。
項目別では「住宅建設」を引き上げ、ほかの項目はすべて据え置いた。住宅建設は、新設住宅着工戸数が持ち家、貸家、分譲住宅ともに前年を上回っていることを反映した。
「個人消費」は判断を据え置いたが、百貨店やスーパー、コンビニエンスストアの販売額が前年を上回っているほか、山梨県内のまん延防止等重点措置の解除や首都圏の緊急事態宣言の解除をうけ、観光・宿泊の一部で客足が戻りつつあるという。家電は巣ごもり需要が一巡し反動減が見られるが、東京五輪の影響で大型テレビなどの販売が好調だった。
事業者からの聞き取りでは「ワクチン接種率が上昇し、徐々に人の流れが戻り観光客需要が回復しつつある」(コンビニエンスストア、大企業)との声がある一方、「宣言解除後、宿泊客はじわじわ増えてきているが、まだ昨年、一昨年の5~6割で、客足の戻りは鈍い」(宿泊、中小企業)などの声もあった。
また、中部横断自動車道の山梨―静岡間が8月29日に全線開通したことについて河内所長は「観光や宿泊で開通効果を指摘する声があった。ただし、東海地方から近くなったことで、滞在型より通過型の観光が増えており、通過型に終わらせないことが重要になっている」と述べた。