山梨県で10月に予定されていた戦国大名・武田信玄をしのぶ「信玄公祭り」が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、初めて2年連続で開催が中止されることとなった。今年は信玄生誕500年に当たり節目を盛大に迎える予定だったが、実行委員会が10日、首都圏などの感染状況を踏まえ、来春への延期を決定。実行委会長でもある長崎幸太郎知事は「信玄公におわびする」と無念をにじませた。【梅田啓祐】
武田信玄は戦国時代の1521年に、甲府市内で誕生したと伝わる。甲斐の国(現在の山梨県)を統一し、上杉謙信をはじめ、織田信長、徳川家康などと渡り合う一方、「信玄堤」を築いて治水対策にも取り組むなど、今も「信玄公」として尊敬を集めている。
信玄公祭りは甲府市中心部を会場に例年、信玄の命日(4月12日)直前に開催される春の風物詩。多数の武者が舞鶴城公園(甲府城跡)に集結し、日本最大級の行列を織りなす観光イベントとしても知られる。
しかし、新型コロナの感染拡大を受け、20年は中止に。その後も感染状況は好転せず、21年は4月開催を見送り、11月3日の信玄生誕500年と合わせた記念行事を10月に企画し、武者行列では俳優の筧利夫さんが信玄公役を務める予定だった。実行委などは、信玄が軍配を振る姿をデザインし「今なお語り継がれる伝説のヒーロー」とのキャッチフレーズを添えた500年記念ガイドブックを発行。県内各地にのぼり旗を立てるなどPRを展開し、機運醸成に努めてきた。
しかし、首都圏でコロナの収束が見通せない中、10日の実行委臨時総会で、事務局による開催延期の提案に対し関係団体は「延期はやむを得ない」と賛同。来春の開催に向け検討を進めることとし、11月の総会で正式な日程を決めるとした。実行委によると、過去には1976年(オイルショック)と、2011年(東日本大震災)に開催を断念した例があるが、2年連続の中止は初めてという。
実行委の仲田道弘副会長は延期理由について、首都圏で宣言が延長された点と、ワクチンを2回打っても感染が広がる状況が生じている点を指摘。また、祭りでは、よろいかぶとや馬、参加者の交通手段のバスの手配が不可欠で、今後1カ月準備を進めた後に中止すると2倍、3倍のキャンセル料が想定されるという。仲田副会長は「県民挙げてお祝いするお祭りだったのでとても残念だ」と、肩を落とした。
県も、祭りをコロナ禍で打撃を受けた経済界の反転攻勢に向けた「のろし」を上げる大舞台と位置づけ、ワクチン配分ペースの加速化などに取り組んできた。しかし、長崎知事は9日の臨時記者会見でデルタ株が依然として猛威を振るっている点などに触れ、延期の方向性を表明。「信玄公にはおわびをしながら一連のイベントは春まで再度延期するのが迎える側にとってもプラスになる」と述べた。
延期決定を受け、長崎知事は改めて「無念の極みであり断腸の思いだ」とコメント。「来春こそは、県民挙げて盛大に開催し、心から楽しんでいただける祭りとなるよう準備を進めていく」と結んだ。