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2021/09/01 , ,

金沢をコーヒーで表現 百年珈琲の石田政久さん

金沢をコーヒーで表現 百年珈琲の石田政久さん

金沢市内にコーヒー店を持つ百年珈琲は、金沢のイメージが伝わる味づくりにこだわる。代表の石田政久(54)は地域のブランディングにかかわるうち、コーヒーに行き着いた。「コーヒーは味や香りが記憶に残る」と語り、思い出として持ち帰ってもらいたいという。
市内を流れる犀川沿いにある「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」。名建築家親子の足跡を展示したミュージアムに6月、百年珈琲が入店した。同店では限定商品のブレンドコーヒー「犀川」が味わえる。「雄大なイメージで、コクが続く」のが特徴だ。
金沢では、観光名所であるひがし茶屋街の近くを流れる浅野川を「女川」と称するのに対し、犀川は「男川」と呼ぶ。コーヒーの味も呼称に合うようにした。
2017年、テークアウト専門店として百年珈琲を創業した。ひがし茶屋街近くの築100年の古民家を活用したことにちなんで名付けた。
開発した商品はコクが強いが飲みやすい「兼六」と、すっきりしながらも、酸味がある「友禅」。それぞれ金沢の男性、女性をイメージした。7種類、5種類の豆をブレンドし、豆ごとに焙煎(ばいせん)を変えた。
「イメージから味をチューニングする。味ありきでストーリーを後付けするのではない」のがこだわりだ。100年先まで愛されるコーヒーを目指して開発した。
観光客でにぎわう東山の店舗は今はないが、兼六と友禅は好評を得て、商業施設などでの出張販売が増えた。現在は金沢駅の商業施設にも期間限定で出店している。
金沢市の出身で、東京のIT企業に就職し、コールセンターのセンター長などを経験した。「いつかは社長に」との思いから、01年にコールセンターの立ち上げを支援するコンサルティング会社を創業した。
その後、企業などのブランド育成支援に軸足を移し、地域おこしにもかかわるように。地域の食や文化を伝える手段になると考え、14年に豪華なキャンプを楽しめる「グランピング」の事業を始めた。
17年、石川県珠洲市で開かれた「奥能登国際芸術祭」で、グランピングの仕事が舞い込んだ。宿泊客をもてなそうと、コーヒーに詳しい仲間と考えたのが奥能登ブレンドだった。能登が世界農業遺産に認定されていることから「自然をイメージして、コクのある香ばしいコーヒー」を作った。この経験が東山での出店の契機になった。
アウトドア関係のつながりで依頼が相次ぎ、山梨県のイベントでは富士山にちなんだ商品を販売した。地域をコーヒーで表現し、味の記憶が地域のブランドイメージ向上に一役買う。こうした循環を作り出すのが理想だ。 =敬称略  (石黒和宏)

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