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2025/10/22 , ,

江戸時代の富士信仰、ツアーで追体験 富士吉田市などが開発

江戸時代の富士信仰、ツアーで追体験 富士吉田市などが開発

 江戸時代に広まった富士山を信仰する「富士講」。多くの信者がふもとから山頂を目指した「登拝(とはい)」を追体験するツアーを山梨県富士吉田市などが開発している。5合目を出発する登山が主流になる中、世界文化遺産と認められた「信仰の対象」に焦点を当てたツアーで、薄れつつある歴史や文化を守り、体験型消費への関心が高いインバウンド(訪日外国人)らの取り込みも図る。【野田樹】
 富士山の夏山シーズンが中盤にさしかかった7月末、ふもとの富士吉田市から山頂まで続く「吉田口登山道」を、白装束を着た一行が歩いていた。深い森の中、先頭を行くのは地元の「富士山元講」を復活させた勝俣俊二さん(41)。1合目(標高1520メートル)の「鈴原社」に着くと、勝俣さんが唱える「お伝え」に合わせ、同行者が目を閉じて手を合わせた。
 この日は、ふもとから2泊3日で山頂を目指す試験的なツアーの2日目で、インバウンド向け旅行会社の関係者らが7合目の山小屋を目指した。参加者の1人は「5合目より上には樹木がないが、ふもとで豊かな自然を体験し、歴史にも触れられた」と評価した。
 富士山は2013年、「信仰の対象と美術の源泉」として世界文化遺産に登録された。富士吉田市内には、富士講の信者が登った吉田口登山道や、信者の世話をした「御師(おし)」の家がある。江戸後期には、御師の家が86軒もあったという。
 市は文化庁の補助金を活用し、登山ガイドらでつくる一般社団法人「マウントフジトレイルクラブ」にツアー開発を委託。夏山シーズンに山頂を目指す2泊3日に加え、通年開催でふもとを巡る日帰りと1泊2日の計3コースを計画している。
 2泊3日コースでは、初日に今も宿を営む御師の家に宿泊し、信者に提供された料理を食べたり、教典を唱えたりする。2日目に登山ガイドが付いて吉田口登山道を登り、山小屋に宿泊。山頂で翌朝のご来光を見て下山する行程を想定する。
 市富士山課の勝俣美香・観光担当課長は「信仰の山として富士山を見つめ直すツアーにしたい。市内の歴史や文化を学ぶ体験を通して、まちの魅力が伝わるのではないか」と話した。
 通年のツアーは、10月から販売を始める予定。来年の夏山シーズン前に、2泊3日のコースも売り出すという。申し込みは特設サイト(https://fuji-ko-trail.com/)。
 富士吉田市は今年度、吉田口登山道の1~5合目に残る文化財の保存や活用を進めている。富士スバルラインの開通で多くの登山者が5合目に直行するようになり、富士講の信者らでにぎわった1~5合目の山小屋は廃業に追い込まれた。現存する神社なども損傷が目立っている。
 同登山道は、ふもとの北口本宮冨士浅間神社(同市)を起点に山頂の久須志神社まで続く。富士スバルラインを利用する登山者と合流する6合目から先は「吉田ルート」として知られる。
 市は2023年度に国や県、有識者でつくる委員会を設置。25~34年度の10年間で、損傷の激しい建物の補強や解体を進め、1合目の鈴原社などの復元を目指している。
 市によると、今年7月1日~9月10日に、同登山道の6合目を通過したのは約14万3000人。ふもとの「馬返し」(標高1450メートル)を通過したのは約2万人にとどまった。

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