富士山がコンビニエンスストアの上に乗ったような構図の写真を撮ろうと外国人観光客が押し寄せ、撮影スポットに黒い幕を設置した山梨県富士河口湖町。24日、渡辺英之町長が記者会見し、外国人観光客や地元住民の安全を最優先にした対策だと説明した。幕の色は「黒だとちょっとイメージが悪いので、色合いについては検討していきたい」と述べ、景観にも配慮していく考えを示した。
町によると、大型連休前に幕を設置しようと、4月ごろに素材のサンプルを集めたところ、他の色ではスマートフォンを近づけると透けてしまうことが分かったという。渡辺町長は「他の色がないかという話は出たが、黒以外に選択肢がなかった」と振り返った。防護柵なども含め、費用は計約130万円だった。
設置を決めて以降、町には電話とメールで計約250件の意見が寄せられた。「(撮影スポットになったコンビニの)ローソンを茶色にしたらどうか」「ローソンの屋上に看板や幕を設置したらどうか」「歩道橋をつくったらどうか」――などの代替案もあったが、電話で寄せられたのはほとんど反対意見だったという。
一方、観光客のマナー違反は減少し、町観光課の担当者は「警備員1人で対応できる『許容範囲』に落ち着いてきた」と効果を強調した。幕にはQRコードを貼り付け、町内の撮影スポットを紹介する観光地図にアクセスできるようにして、観光客の分散を図る。
町は、幕の設置は「暫定的な措置」としており、事態が落ち着けば取り外す方針。渡辺町長は「外す目安ははっきりしないが、早く取り外せるように、(このスポット以外の)町の魅力を発信する施策を打っていきたい」と話した。【野田樹】