東京エレクトロンの生産子会社、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ(山梨県韮崎市)は20日、岩手県奥州市の工業団地に新棟を建設すると発表した。2025年秋の稼働を目指す。将来の半導体需要拡大を見込み、半導体製造装置の生産能力を新棟稼働時で1.5倍、その後の生産効率化などで最大2倍まで引き上げる計画だ。総工費は約220億円を見込む。
同日、奥州市と工場立地に向けた協定を結んだ。新棟は2階建てで、延べ床面積は約5万7000平方メートル。2階部分で半導体ウエハーの成膜装置を生産する。1階には物流センターを設けて生産を効率化する。協力会社に生産を委託している部品を物流倉庫内に集めるなどして、生産のためのリードタイムを短くする。
奥州市での生産拠点は7棟目。20年に同じ奥州市で稼働した6号棟は「フル生産の状況にある」(佐々木貞夫社長)という。足元の半導体市場は調整局面にあるが、成膜装置については多層化で工程が増えたり、技術が高度化したりするなどして「成長を続けており、24年度にはさらに高い需要が見込める」(同)。新棟を建設する敷地にはまだ余裕があり、さらなる拡張も視野に入れる。
従業員は協力会社を含め、900人規模を見込む。このうち半分の450人程度を新規で採用する計画だ。
東京エレクトロンは中長期的な半導体市場の成長を見据え、積極的な設備投資を続けている。国内では岩手県のほか宮城県や山梨県、熊本県に主な生産拠点があり、増産に向けて体制を強化してきた。22年6月公表の新中期経営計画でも「市場成長を見越した生産能力の増強投資」を重点項目に掲げた。
生産増強と併せ、最先端半導体をつくるための次世代装置の開発にも注力しており、27年3月期までの5年間で総額1兆円以上の研究開発費を投じる計画だ。過去5年間の7割増にあたる水準で、先端品の開発や量産に向けて技術力を高める。
高速通信規格「5G」やあらゆるモノがネットにつながる「IoT」などの普及で半導体製造装置の市場は拡大基調が続いてきた。半導体国際業界団体のSEMIによると、22年の半導体製造装置の販売高は過去最高の1085億ドル(約14兆2000億円)となる見通し。23年は半導体の在庫調整などで一時的に減速するもようだが、24年以降は再び増加に転じると予測している。