山梨県北杜市で2017年に自殺を図った当時中学1年の女子生徒(16)が訴えたいじめの被害を学校側が「重大事態」と判断しなかった問題を巡り、市教育委員会が設置した第三者委員会は20日、いじめの実態や学校の対応に関する報告書の概要を公表した。学校や市教委の対応を「不十分だった」と指摘した。
13年施行のいじめ防止対策推進法は、いじめにより生徒らの生命や心身に重大な被害が生じた疑いがある場合、いじめによる重大事態と認定し、第三者を交えた委員会で事実関係を調べるよう求めている。だが学校側は17年12月時点でいじめを把握したが、第三者委を約半年間設置しなかった。実態が報道で表面化する18年11月まで、重大事態と認めなかった。
第三者委は甲府市で記者会見を開き、18日に報告書を市教委に提出したと説明。報道関係者に概要を示した。報告書はこれまでに明らかになっている事実関係を大筋で追認した。
報告書などによると、女子生徒は東京電力福島第1原発事故後に福島県を離れ、小学生だった13年に市内へ移住した。仲間はずれにされるなどのいじめを受け、17年に中学に進んでからは学級で孤立。11月に自宅で自殺を図った。翌月に学校のアンケートで「無視、仲間はずれにされている」などと回答し、教職員たちに相談した。18年1月から不登校となった。
報告書は女子生徒について「教員をはじめ大人が対応しないことが更に苦痛を与えた」と指摘した。第三者委委員長の八巻佐知子弁護士は学校の対応を「(いじめを)把握もできず、対応が不十分だった」と批判。一方で「死にたいと考えていた」女子生徒が軽傷だった点を「自殺未遂と表現することは不適切」と述べ「自傷行為」と表現した。
同席した市教委の輿水清司教育長は「被害生徒の心情を学校も十分に把握しておらず、市教委としても積極的に調査する判断となっていなかった」と陳謝した。【梅田啓祐】