この度、ニューヨークを拠点に活動する若手アーティスト・今坂庸二朗は、山下有佳子によるキュレーションのもと、フランス・パリで初の個展「Returning Bayou (リターニング バイユー)」を10月17日(月)から10月30日(日)まで開催します。
Yojiro Imasaka #71, 2021, Photograph, Toned Gelatine Silver Print Wet Plate Collodion Process 135cm x 168cm
世界各地の自然に飛び込み、気候や風景の変化を観察し、長い時間をかけて唯一無二の一枚を写し出す今坂の作品は、その風景から連想される過去現在だけでなく、未来をも想起させるイメージを創る事をテーマとしています。
今展覧会では2021年春、約6週間かけてアメリカ南部、バイユー(Bayou)と呼ばれる湿地帯にて撮影された作品を展示予定しており、その撮影地に関して今坂は「バイユー独特の自然環境は原始の森を思い起こさせ、息を飲むような静かな光景が、非常にゆっくりと流れる水に映し出される様子は、我々の持つ時間の感覚を麻痺させる」と、述べています。また、展示予定作品は全て19世紀に使用された写真技法、湿版写真/コロジオン・プロセスを用いて制作されており、それらの写真は古典技法であるが故にシャープさに欠け、時にイメージが剥がれ、薬品の跡が残ったりするなど、有機的で独特なイメージを写しだす事から、人の記憶の不確かさと儚さに例え、デジタルカメラでは写し出せない自然の時間の流れを描き出します。そして膨大な情報を記憶するデジタル機器との対比として、例え曖昧であったしても、それぞれの心に刻まれた記憶の重要性を今坂は問います。
パリ初個展に際し、今坂庸二朗と山下有佳子は以下のように述べています。
「今個展において発表する全ての作品はアメリカ、ルイジアナ州、ニューオリンズ周辺に広がるバイユーと呼ばれる湿地帯で撮影したものです。フレンチ・クオーターに代表されるようにニューオリンズとフランスの関係は古く、17世紀にまで遡ります。またバイユーという言葉は元々ルイジアナ州に移り住んだフランス系移民に寄って名付けられ、彼らはアカディア人と呼ばれました。ギリシャ語のArcadis(アルカディス)に語源を持つこの言葉はユートピア・理想郷を意味し、新大陸を目指して辿り着いた彼らの足跡を知る上でも非常に興味深いものです。その昔、理想郷を目指し過酷な航海を経て海を渡った人々が見たであろう風景を、時代を超えてフランス、パリで発表できる事を嬉しく思うと同時に、過去、現在、そして未来を繋ぐそれらのランドスケープの中に、忙しなく生きる我々現代人が忘れかけている悠久の時間の流れを感じてもらえたら幸いです。」
(今坂庸二朗)
「今は、光の都と呼ばれるパリもまた、かつては闇に包まれていたといいます。薄さわずか1mm のガラスの板に薬品を塗ったものをフィルムとして大判カメラに入れ、そのガラスにイメージを定着させる湿版写真。荒々しくも雄大なバイユーの自然を、極めて繊細な技法 で映し出す今坂の作品には、対極の要素が共存して生み出される美しさが在ります。青々としたバイユーの湿地帯の景色から、その一切の色をあえて消し去り、白と黒という要素のみを残し、極限までに削ぎ落とされた作品群からは、光が感じ取れます。本来、光は色彩を生み出し、その色は目に見えませんが、今坂の作品は、光そのものが色を湛えるかのような感覚を我々に与えます。私たちの心の中にも存在する闇と光。さまざまな色を想像しながら、未来の情景を見出す時間をお楽しみ頂ければ幸いです。」
(山下有佳子)
今坂庸⼆朗 プロフィール
今坂庸二朗 ポートレート
アーティスト/写真家。1983年広島生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、2007年に渡米。ニューヨークのプラットインスティテュートでMFAを取得し、これまでにミネアポリス美術館、東京都美術館、パリフォト、Miyako Yoshinagaギャラリーなどでの個展やグループ展で作品を展示。作品は、サンノゼ美術館、ミネアポリス美術館、ミード美術館 / アマースト大学、カーネギー美術館、ニューオリンズ美術館、また複数のプライベートコレクションに収蔵されている。「8×10」と呼ばれる大判のフィルムカメラを用いて、主に自然の風景を被写体とした作品を制作する。欧米を中心に高い評価を得ると同時に、2022年2月には自身初となる東京での個展「Wet-Land」を開催し。今夏「TSUNAGU – 表参道 ストリート アート プロジェクト」ではFENDIに招聘され、未発表作品を3点展示し、日本での活動の幅も広げている。https://yojiroimasaka.com/ 山下有佳子 プロフィール
山下有佳子 ポートレート
1988年、京都で茶道具商を営む家庭に生まれる。慶應義塾大学卒業後、サザビーズ・インスティチュート・オブ・アートにてアート・ビジネス修士課程を修了。2017年「THE CLUB」を設立。2022年「Art Collaboration Kyoto」プログラムディレクターに就任。京都芸術大学の客員教授を務める。また、2022年より京都市成長戦略推進アドバイザー(アート市場活性化担当)就任。開催日時:2022年10月17日 (月) – 10月30日(日)11:00 – 19:00(最終日15:00)
オープニング・レセプション10月17日(月)17:00−19:00
住所:16, rue du Faubourg Saint-Honoré 75008 Paris, France
プレスコンタクト
大岡陽子 yoko@yokoandcie.com
この度オープニング・レセプションに、山梨銘醸七賢より、Alain Ducasse Sparkling Sake(アラン・デュカス スパークリング・サケ)をご提供いただきます。
山梨銘醸 七賢
山梨銘醸 七賢
創業1750年(江戸寛永3年)、300年近い歴史を誇る七賢は、山梨県の日本アルプスの中でも非常に良質な水が湧き出ることで知られた白州エリアに蔵を構える。「地元白州の水を体現できる酒」を哲学とし、白州の水と相性の良い造りを追求して吟醸造りの原酒仕立て手法を確立。2014年より新たな部門としてスパークリング日本酒の製造に注力し、世界で愛される日本酒という価値の創出に向けて取り組んでいる。2021年アラン・デュカス氏と共同開発した革新的なスパークリング日本酒「アラン・デュカス スパークリング サケ」を発表。デュカスの心のテロワール、地中海からインスピレーションを得て、桜の樽での熟成、瓶内二次発酵を用いた独自のスパークリング日本酒が完成。