日本人の国民食となったカレーライス。中でも「ご当地カレー」は自宅で手軽に地方の味が楽しめるとあって人気だ。記者も家で食べてみようとスーパーで商品を選んでいると、製造者欄には大手ではなく見慣れないある大阪の会社の名前ばかりが目につく。全国のご当地カレー全体の2割をこの会社が作っているという。会社を直撃すると、見えてきたのは中小企業ならではの工夫だけではない。市場が大激変する中、大手企業との激しい競争にさらされている現実も浮かび上がってきた。【野口麗子】
「北海道や山梨、広島のカレーまで何で大阪の会社が作っているの?」。子育て中の30代記者は10月、調理時間が短いレトルトカレーを食べようと商品を選んでいると、ご当地カレーの製造元が同じ会社なのに気付いた。レトルトカレーを食べるのは約8年ぶり。登山部だった学生時代、お湯で温めるだけのレトルトカレーを山でよく口にしたが、家でまで食べたいと思うことは正直なかった。しかし、1歳の子どもを育てながら、手軽に食べられるレトルトカレーは重宝しそうだ。有名店の名前が入ったものにはやや値段が高いものもあるが、食事を宅配してもらうよりは安い場合が多い。レトルトカレーについて調べてみようと、大阪府高槻市に向かった。
百貨店「高槻阪急」の地下1階にはまるで本棚に収められているかのようにレトルトカレー約300種が並んでいた。「カレーなる本棚」と名付けられた陳列棚は、大阪府枚方市や東京都調布市などにもある。棚では、ルーが真っ青な「青い富士山カレー」(200グラム、864円)や神奈川・湘南産レモンを使った「湘南のレモンカレー」(同、540円)、自衛隊の街、広島県呉市の「呉海軍亭肉じゃがカレー」(同、432円)など全国のご当地カレーが目についた。各地でカレーなる本棚を手掛ける食料品専門店「北野エース」の野村駿也店長に聞くと「全国のご当地カレーの多くを大阪の会社が作っています。業界では有名な会社です」と教えてくれた。果たしてどんな会社だろう。行ってみた。
大阪市鶴見区にその会社はあった。大阪メトロの横堤(よこづつみ)駅を降り、住宅街に入ると何となくカレーの香りが漂っ…